1.審議の背景と経過
(1) 金融商品に係る時価情報の開示は、平成2年に企業会計審議会が取りまと
めた「先物・オプション取引等の会計基準に関する意見書」を踏まえ、先物
取引・オプション取引及び市場性のある有価証券(平成3年3月期以降)、
先物為替予約取引(平成7年3月期以降)、デリバティブ取引全般(平成9
年3月期以降)に逐次拡大・充実されてきた。
(2) 企業会計審議会では、平成8年9月から、金融商品部会において、我が国
の会計実務、諸外国の会計処理基準、国際的動向等について審議を行い、今
般、論点整理(中間報告)を取りまとめた。今後、整理された論点について
引き続き検討し、来年夏頃を目途に意見書を取りまとめる予定である。
2.論点整理の概要
(1) 時価評価の導入
金融商品は、非金融商品(営業資産)と異なり、取引市場が存在すること
により時価を把握し、かつ、いつでも換金等により損益を確定できる(価格
の客観性及び売買の自由の保証)。
従って、時価の変動を財務諸表において認識することによって、金融商品
の多様化、価格変動リスクの増大等に伴う企業の財務活動の実態をより的確
に反映した情報を提供することが必要であるとの考え方に立って、時価評価
導入のあり方を検討する。
○ 金融商品の種類(デリバティブ取引、有価証券、特定金銭信託、営業債
権・債務等)及び保有目的(トレーディング、長期・短期保有、企業支配
等)及び拘束的性格等を勘案して時価評価の範囲を検討する。
○ 時価の変動を認識した後の評価差額の処理方法を検討する。
(注)時価評価導入に当たっては、時価測定が困難なものの取扱い、財務諸
表の注記情報との関係、配当可能利益との関係等の問題点がある。
(2) ヘッジ会計の導入
ヘッジ目的の取引の経済的実態を財務諸表に的確に反映させるために、ヘ
ッジ会計の導入について検討する。
(3) 複合金融商品の区分処理
新株引受権付社債は、資本取引部分を区分して処理することを検討する。
なお、転換社債は、社債と株式転換権が一体となっており、各々独立して存
在するものではないことから、区分して処理することは適当でないとの意見
について検討する。
また、資本取引部分を含まないものは、その構成要素を分解しても投資情
報として有用性が乏しく、区分処理する必要はないことについて検討する。
(4) 金融資産・負債のオフバランス化要件
リスク・経済価値アプローチと財務構成要素アプローチの2つの考え方の
うち、債権流動化市場の活性化等の観点から、実質的な経済効果を重視する
「財務構成要素アプローチ」を採用することを検討する。その際、我が国の
実情にあったオフバランス化の要件等について考慮する。
(5) 貸付金の減損
貸付金に係る回収不能見込額については、従来の○担保処分見込額、○保
証による回収見込額、○過去の貸倒実績率による測定方法に加え、延滞債権
や金利減免・棚上げ債権等について、将来回収される元利金のキャッシュ・
フローの割引現在価値を用いる方法を検討する。
(6) 表示方法
ネッティングに係る相殺表示、流動・固定を区分する基準を検討する。
(7) 商法との調整
金融商品に係る会計処理基準として時価評価を導入する際には、現行の商
法の計算規定との間に不一致が生じることから商法との調整を行うことが必
要になると考えられる。